大田の口説き


【継ぎ(受け)の句説き】

1

ちょいと貰うた お上手のあとを へたのへの字が打ちとらまえた

 

2

行くか行かぬか行く所まで ちょいとでて来い色よき文句

ちょいと出たのは掻いとらまえて ちょいと一言句どいてみましょ

ちょいと出てこい、こい、こい、こいと

 

3

ちょいと出た出た雨夜の星よ ちょいと出たのをかいとらまえて

しばし間はくどいて見ましょ 誰もどなたもはやしておくれ

囃なければくどかれません ちょいと出た出た、出た出た月が

ちょいと出たのをかいとらまえて くどき文句の数ある中に

 

4

ここに過ぎにしその物語り 白井権八直則こそは

犬のけんかがいこんとなりて 同じ家中の近藤氏を

まだもこの先江戸まであれど どうやらここらで声つぎたのむ

誰かどなたかどなたか様か 誰かどなたかどなたでもよい

 

5

誰かどなたかお願い申す あなた私の肩うつ人が お傘あげるにゃ

口上もあれど 口上等には夢かは知らぬ 口上なしにはお渡し申す

さらとあげます 覚悟をなされ 覚悟よければ この後の声

 

6

ちょいともらうた先程のお上手 先の大夫さん仲々ごくろ

ごくろなされしお礼のために 先はあれにてお茶などあがれ

お茶がいやならおたばこなりと お茶もたばこおいやとあれば

あなたおすきのあのあねさんと 奥の一間でねてかたりゃんせ

後はへの字がしばしの間 しばし間はあやぼうみてましょ

 

7

ちょいと貰うた先様お上手 先のお方は何方様か

一で声よし二で節がよい 三で取り出す頓知のよさは

四には品よし 五にゃ御名人 御名人様お立ちの後で

へたな私がしばしの間 しばしあいだは後つぎします