白鬚田原神社のどぶろく祭り


毎年10月17日、18日



 

どぶろく祭りとは

 

和銅3年(710年)に始まった白鬚田原神社のどぶろく祭り(県選択無形民俗文化財)は、全国でも数か所しか醸造を許されていないどぶろくをいただけることで知られる全国でも有数の奇祭となっています。

どぶろくは一滴も残さないのが慣例で、余った場合は道行く人を境内に呼び上げて振る舞い、樽を空にしてしまいます。

五穀豊穣のほか長寿祈願としての信仰も集めています。

どぶろくは上代より徳川時代の間は自由に醸造し、神前に供えそのお下がりを心霊の宿る長寿の薬として氏子、参拝者がいただいていたといいます。また、どぶろくの醸造は、明治18年(1885年)10月10日付、県令により酒造税則範囲外として課税されていなかったが、明治30年(1897年)酒税法改正で、古例により明治13年(1880年)以前から引き続き醸造している神社に1石未満(約180リットル)に限って当分の間酒税を課せずとなり、同年熊本国税局に申請し、10月7日、神社御神酒用として無税醸造が免許されました。その後、昭和20年(1945年)11月25日大蔵省令により、酒税法が改正され「無税の項を廃止す」の通達により課税されるようになりました。昭和45年(1970年)11月には大分県選択無形文化財に指定され、伝統ある祭りとして今に伝えています。

白鬚田原神社のどぶろく祭りは毎年、10月17日、18日に開催されます。

御酒・どぶろくを奉納するまで

 

神前に供えたどぶろくを、神霊の宿るお下がりの酒としてありがたくいただいていたこの祭りは、祝組・神元・杜氏の三者が一体で奉仕し、醸造始の儀から大祭の日に向けて、神社と氏子たちのどぶろくづくりが行われます。特に祝元は順番制(約100年目)のため自分一代でできるかどうかの光栄な大役です。

9月25日 醸造始の儀 

どぶろく祭りの始まりの儀式。氏子たちが持ち寄った2俵のほか、20俵の原料米を蒸し、麹と混ぜて搗く儀式です。蒸された米は境内に拡げたさらしに移されます。ちょうどおこわのような固さです。1時間ほど冷まされた後、氏子の手によって丁寧に搗かれ、静かに醸造されます。

 

10月1日 掛添えの儀

さきの「醸造始の儀」と同じ仕込みを繰り返します。これでこの年の米の仕込みはすべて完了です。出来上がる量は約2,200リットル、ドラム缶で12本くらいになります。この日より杜氏は醸造過程を見守るために神社に宿直(とのい)を始め、昼夜を問わずどぶろくとともに過ごします。 

10月8日 口開式、酒精検査

税務署による検定が行われ、酒税法にのっとり税金を支払います。また「口開式」で味見も行われ、今年のどぶろくが甘いか辛いかがわかります。この時点でのアルコール度数は平均17度で少し酸味が感じられますが、大祭までに発酵が進み、口当たりも柔らかくなり(糖度12~13%)、度数は20度ほどまでになります。

 

10月12日 潔斎式

「しめおろし」「精進がため」ともいいます。濁酒を各自座でいただく「霜けし」の後、関係者はふんどし姿になり、川で穢れを祓う「禊」を行います。式では注連縄がなわれ、神社や自家の門などに下ろします。また、この日を境に祓いの生活に入り、関係者は大祭の日まで言動を慎まなければなりません。

10月16日 潮汲み

祭りの前日の10月16日には「潮汲み」の儀が執り行われます。精進人2人が竹筒を持ち、杵築の浜に赴いて潮を汲んできます。

 

10月17~18日 大祭(17日前日祭、18日神幸祭)

大祭は神事などが行われる17日の「前日祭」と、神輿行列などが行われる18日の「神幸祭」からなります。待望のどぶろくはこの両日の午前9時ころより振る舞われ、境内で寝入ってしまう人、酔いのために笑いが止まらなくなる人などで大賑わい。熱気と歓声に包まれて祭りは一気に最高潮を迎えます。

 

10月18日 出座の儀

祝元の代表者の「4ヵ村のじがんしゃ、よらん、しゃらんしーい(上沓掛・下沓掛・石丸・筌口4ヵ村の神元衆は出座してください)」という大声が3度上がると、出座の儀が始まります。神幸の還幸後、関係者が濁酒やお供えをいただき、神主が総祝詞をあげます。

 

10月20日 終祭

神門をはじめ、各自の家門に飾った注連縄を取り外し、祭事がつつがなく終了したことを報告します。16日から宿直した者に祝組も加わり、慰労の会を開きます。別名「はけあげ祭」ともいい、この終祭が幕を閉じるとこの年のどぶろく祭りすべてが終わるのです。

 


◆どぶろく杜氏より◆

 

五穀豊穣・無病息災を願ってはじめられた祭なので、米を搗く、かき混ぜる、頃合いを見るといったすべての過程において、感謝の気持ちを胸にどぶろくを造っています。これからも伝統を絶やさず “今年のどぶろくはおいしかった” と一般参拝者に喜ばれるようなどぶろくを造り続けていきたいと思っております。